ばあちゃんが半年くらい入院していた。
2,3ヶ月で退院できるはずだったが、手術した後の治りが悪く長引いてしまった。
じいちゃんはかなり最後の方まで泊り込み、看病をした。
じいちゃん自身、ばあちゃんのいない家に居辛かったのかもしれないし、
寂しかったのかもしれないとも思う。
日中に洗濯物を持って帰ってきては母に頼むこともせず(自分でしないと気がすまないらしい)
洗濯をし、ばあちゃんの気が弱って泣いているときも励ましたり、
熱が出たら泊まりこみで看病したり。
病院にダメだと言われていても、勝手に精のつくものをと魚を買ってきては食べさせていた。
ばあちゃんが「もう食べれんわぁ」と箸を置くと、「食べんのやったら帰るぞ!」と怒る。
そしたらばあちゃんは涙を流しながら食べよるんやぁ、とじいちゃんは大笑いしていた。
かわいそうで可愛いばあちゃんに、こっちが泣きそうになる。
じいちゃんなりの愛情だけど。
やっとのことで退院した日の夜、いつもどおり私は居間から自分の部屋に行く。
うちの家の作りは継ぎ足し継ぎ足しで変なことになっていて、
じいちゃんばあちゃんの寝室を横切らなければ部屋に行けない。
親切にも蛍光灯の小さい電気をつけてくれていて、通る際に消していくのだ。
それで、ふとじいちゃんばあちゃんのベットを見やると、
じいちゃんの手がばあちゃんの肩を抱いて寝ていた。
もう一度見直したが、やはりそういう構図になっていた。
ばあちゃんは足が悪く、リハビリもしているので外へ出れない。
継ぎ足しだらけの家の中を歩くのもひと苦労。
じいちゃんは「つまずくなよ」「気ぃつけや」と声をかけたり、
ごはんをついで、お盆にのせて持って行ってあげたりしている。
スッポンポンでマッサージしてあげたり、退院したての時はお風呂に入れてあげたり。
今度は、そんなやさしいじいちゃんが入院している。ずっと足が悪かった。
でも、あと2ヵ月すれば、痛みもなくなり元気に帰ってくる。
今日は手術が終わって二日目。もう普通のごはんに戻り、退屈そうにテレビを見ていた。
私が現れると達者な口を利く。
看病する母のほうが心配だがすぐいつもの毎日に戻るだろう。
ばあちゃんも、喧嘩相手がいなくてちょっと寂しそう。
だけど、泣きそうな声で人を呼ぶ術まで覚えている。
あの抱き合う2人を見れるのが待ち遠しい。
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